映画シャイニングをミストリーとして読み解く
この記事は筆者による映画シャイニングの考察記事である。
筆者が見ているのは主に流通している国際版(119分版)である事。
原作と映画は別物なので原作でこう説明されてるのでこれが正解だよという論調は使用しない。
ミステリーとして読み解くという事は、
『映画内で真実にたどり着くための手がかりは全て揃っている(と解釈する)』という事である。
以降
地の文、そのままの描写、事実を黒で表示する。
現実的な解釈、オカルトを否定する解釈を赤で表示する。
オカルト解釈を青で表示する
超能力に由来する解釈をピンクで表示する
映画的演出表現と緑で表示する。
●インタビュー
ダニーが左手の人差し指を使い、腹話術のような事をしている。
母親のウェンディも認識しているトニーというイマジナリーフレンドが居るようだ。
ジャックとアルマンの会話でグレーディという人物が出てくるが
グレーディーは妻と二人の幼い娘を、オノで惨殺し自分は猟銃で自殺した。
原因はキャビンフィーバー(閉所恐怖症)によりおかしくなった、と判断されている。
そのあとダニーは鏡を見ながら左手の人差し指を使いトニーと話している。
(ちなみに当然鏡の中に映る人物は右手の人差し指、ということになる)
後述されるがダニーにはシャイニング(超能力)があり、
特にトニーに未来予知能力が備わっているとされており
「もうすぐママに電話がある」と発言した後に、電話が実際に来ている。
→実際に未来予知が出来ている証拠
→面接の終わり時間くらい想像できるので、妄想の可能性。
この後、ダニー目が大きく開き、画面が変わり
ホテルのどこかで血の洪水が流れるシーン→
ホテルの廊下の突き当たりのような所に居る双子の娘→
周りが暗い中ダニーの叫ぶ顔、と画像が映る。
→これが未来予知である。
→そもそもこれが今ダニーが見ているものだ、という確実な描写が無い。
●ホテル閉鎖の日
ホテルへ向かう車の中、
雪で立ち往生し一冬を乗り切るため仲間の肉を食べたドナー隊の話をする。
→意味ありげだったが特に何の関係もなさそう
ダニーが双子の娘を見かける。しばらしくしてその娘は歩いて立ち去っていく。
→妄想でなければホテルに住む幽霊という事になる?
ホテルはインディアンの墓地の上に建てられ、恨みも買っている。
→インディアンの呪いのような描写は作品中一切無い。
ハロランという黒人が現れ、ダニーの事を先生(ドク)と呼ぶ、その呼び名は家族しか知らない
→最初は上手くごまかせなくあやふやな応対をしているが
最後はアニメのキャラがいるから、とはっきり説明する。これは呼び名の本来の元ネタであり、
母親もしくはダニーがそれを会話中に想像したところを心を読んで回答した。
→本当にアニメのキャラがいることを思い出した可能性もある。
ハロランが口を動かさずに「アイスは好きかい」と発言し、ダニーが聞き取る。
テレパシーのようなもので、ダニーとハロランにはそういった超能力(シャイニング)があると語る。
→本当にそのまま心を読み合えるなら口を動かして会話する必要が無い。
おそらく正確には「メッセージを発信する能力」と「人のメッセージをある程度感じ取る能力」と考えるべき。
「メッセージを発信する能力」を使用している相手のメッセージは楽に読み取れるが、
そうでない相手のメッセージはおぼろげにしか感じ取れないのだろう。
現にハロランはそのあとダニーが話すまいとする秘密は読み取れないし、
ダニーはハロランの想像を断片的にしか読み取れていない。
ダニーはトニーの能力を「未来を見るときは、自分を眠らせている。
目が覚めると断片的にしか思い出せない」と回答。両親に秘密であるとも語る。
→二重人格でトニーが表に出ているときに、ダニーの意識が眠っている?
ハロランは、「出来事は何かしらの痕跡を残す、特別な跡を残すこともある。
未来が見えるように、過去もそうやって見えることがあるかもしれない」と語る。
ダニーは言う「237号室に何かあるの?」
ハロランは「何も無い、だから入るな」と厳しく言う。
→連想のしようもない237という数字まで当てているのであれば
相手の思ってることを読み取れる能力には疑いようが無さそうだ。
●一ヵ月後
部屋での夫婦の朝食シーン。
鏡にカメラがズームアップし、最終的にしばらく鏡の中の二人の様子を写し続けている。
ジャックのシャツに英文字があるが、鏡の画像が見えているため反転して映っている。
(映画視聴者へのメッセージとして、鏡自体にオカルト要素がある、
もしくは鏡を暗喩表現として使う、という意思表示と思われる。
正常に映っているので「この時点では異常無しですよ」という意味かもしれない)
広間でジャックはボール遊びに明け暮れる中、ダニーとウェンディは外の庭園迷路へ。
ジャックはボール遊びを止めて、室内の『庭園迷路の模型』を覗き込むと
そこにはウェンディとダニーが歩いてる姿が→外の場面へ移り変わる。
→よくある映画的な表現で特に意味は無い?
→ジャックの妄想が見えている、もしくは支配欲の暗喩。
自分からは逃げられず囚われの住人だという目で見ている。
●火曜日
ダニーが237号室の前を通り、実際に扉を開けようとするが開かない。
一瞬双子の女の子が映る(インタビュー時に未来予知したときと同じ画像)
→演出的には、ダニーが237号室を見ながら当時の予知を連想した、という表現に見える。
広間ではジャックがタイプライターを打っている。
ウェンディが近づくとちょうど打ち終わったのか紙を抜き取り、
「明日は予報で雪みたいよ」と会話を始めるが、ジャックはイラついており、
最終的に抜き取った紙を破り捨て、作業中近づくなと命令する。
→意識してみてみると、ジャックは紙を見られないように振舞っている。
ウェンディが横に来ると紙を抜き取り、その後も内側に折りたたんでいる
(「絡んでないさ」の台詞のときに良く見ると二つ折りにしているのが見える)
この場面が終わった後、(雪が降っているので次の日?)ウェンディとダニーは雪遊びしているが
ジャックは広間で呆然と立ち尽くして様子がおかしい。
→原稿が上手く行かずストレスで危ない。
●土曜日
広間でジャックは作業中。ウェンディは別の部屋でどこかに電話をしようとするが
電話がつながらないため、無線でホテルを管理する警備室へ連絡。
雪で故障が多いとの回答があり、直すのは雪の間は不可能との事。
→ただの故障か?
→雪で故障が多いので不自然な点は無い。
→誰かが壊した?
→ジャック。不穏な描写はすでに出始めているところ。
→ホテルの幽霊?
そのころのダニー。なんと曲がり角で双子の娘に遭遇。
インタビュー時の未来予知と全く同じ場所、同じ画像で遭遇する。
「ダニー、一緒に遊びましょう」と声をかけてきて
合間合間にその場所に双子の娘が斧で殺されている死体の画像が映る。
→ハロランが「特別な出来事は痕跡となり、過去が見える」と言っていた。
これはこの場所で殺人があった痕跡をダニーが見ている。
双子の娘もここで死んでしまった地縛霊のような存在なのだろう。
また、この二人は総合するにグレーディーの娘で間違いなさそう。
ダニーが目をふさぎ、しばらくすると双子の娘も死体も消えている。
ダニーは「トニー、僕は怖いんだ」と言うと、右手人差し指を使い
「ハロランさんも言ってたろ、本の中の絵と同じで、本物じゃない」となだめる。
→ここまでの話を総合すると、どうも超常現象に関しては
『特別な出来事が痕跡を残し、過去を見たり感じるする事がある。
トニーは未来が見え、過去も同じように感じ取ることが出来る』
という2点は推されているが、それ以外に関しては肯定的でない。
現在の誰かの意思が直ちに影響を及ぼす超能力、
あるいは物理的な超能力、の否定という視聴者へのルール提示かもしれない?
→ところでここでトニーが右手の人差し指になっているが?
→右手左手に特に区別は無い? 描写回数が少ないのでなんともいえない。
→鏡を演出として大事に使っている様子から考えると
鏡の中では右手人差し指だったダニーが、表面に顕在化した伏線と解釈できる。
『未来が見えるのはトニー』なので、平常時から未来が見えるようになるのでは?
●月曜日
自室にて。ジャックとダニーの会話シーン。
ここでも鏡にジャックがしばらく映っているが特に異常はない。
ただジャックは憔悴しきってるような様子でどこかおかしく、こんなことを言う。
「ホテルは好きか?好きになってほしい、出来たら永遠にいつまでもここに居よう」
永遠に?→自縛霊として双子の娘のように……?
先の双子の娘のシーンで翻訳(字幕が出ていない)されてないが
双子も「forever,and ever……」と言っていたため
ホテルの悪霊の共通意思で、すでにジャックもあちら側の人間かもしれない。
ダニーはジャックに「ママと僕を苛めないで」と言う。
→映画後半の出来事を未来予知したうえでの発言?
→ママがダニーにジャックの愚痴を言った可能性もあるが、少し考えにくい。
●水曜日
遊んでいるダニーのところにボールが転がってくる。
→ジャックが投げていたボール?
ボールが転がってきた元へ向かうとなんと237号室の鍵が開いている……
鍵を開けたのは?
→ホテルの幽霊?
ただしキーが刺さったままで開いている(鍵で開けている)
幽霊なら鍵なんか無しで内側からカチャっと開けるのでは?
→ジャック。
鍵も管理していたろうし、ボールも使っていた。
ただし237号室に何かある話を知らないはず
→映画中描写が無いだけで、誰かに聞かされたのかも。
ハロランとの会話中突然「237号室」の話をしたのは
237号室の話を聞かされたジャックの心を読んだ?
→トニー。映画後半では夢遊病のように動くダニーが映っている。
今回もダニーの知らないうちにトニーが行動していて鍵を開けた?
ボールを投げたのは?
→ホテルの幽霊だとすると、霊による物理的な介入を認める解釈になる。
しかしそれなら鍵も、キー無しで開けれそうで矛盾しやすい。
→ジャック。ジャックが独りのときボールを使っていた。
→ボール自体が幻想描写。双子の娘も現実の人間と変わらず見えていたので
ボール一つくらい現実の物体のように見えてもおかしくない。
このボールにダニーは一切触れていないので、現実的な感触も保証無し。
つまり真相は?
→ホテルの幽霊がボールを投げ(本物、幻想問わず)気を引き、誘い込んだ?
→ジャックが鍵を開けた。ボールはダニーの妄想(空いている237室への興味から)。
場面は変わりボイラー室で作業中のウェンディ。
奇妙なうめき声が聞こえ走って向かうと、悪夢にうなされているジャックを発見。
心配して声をかけ起こすと、ただならぬ様子で目を覚まし酷く怯えた様子である。
→時系列が不確かだが、本当に寝ていたなら先のダニーの場面でボールは投げられない。
(鍵を開けるのはいつでも良いので問題ない)
怯えながらも、夢の中でダニーとウェンディを切り刻んで殺したことを告白する。
「俺はきっと気が狂ってしまうんだ」と、そういった兆候を自身で感じ取っているふしもある。
→ここでの様子は演技に見えないため(役者の演技だけど)
ジャックのまともな精神からの、偽りない発言だと思ってよさそうである。
しかし月曜日等一部のおかしいシーンから察するに
狂った人格が芽生えつつある、と言えるのかも知れない。
ジャックをなだめているあいだにダニーが歩いてくるが、
ウェンディは「追い払います!」と焦る。
→反応としては若干過剰に映る。
後述されるが、執筆の邪魔をしてダニーに怪我を負わせたことがあるようで
ストレス状態にあるジャックに子供を近づけたくないのかもしれない(双方共に)
何を言われても無反応のダニーを不思議そうに様子を見ると、首を怪我している。
問い詰めても何も言わずに、ウェンディはジャックがやったんだと思いジャックを詰り、
ダニーを抱えたままその場を走り去る、ジャックはショックを受ける。
ダニーは何故何も答えなかった?
→ジャックにやられたから、父親を悪く言いたくない。
→今現在トニーになっている、もしくは似た状況で意識が無い。
誰に怪我を負わされた?
→ホテルの幽霊が直接怪我をさせた。物理的な干渉能力があるならば、だが。
→自分でやった。理由は不明。ホテルの幽霊に操られた?
もしくはホテルの悪い気に当てられ影響が出た。
●酒場シーン
ショックを受けたジャックはホテルを彷徨い酒場にたどり着く。
鏡が並ぶカウンターの前に座り、酒が飲みたい……魂を売ってでも……と顔を手で覆う。
手をどけると目の前には鏡を覆う大量の酒と並んで、一人のバーテンダーが立っている!
→ホテルの幽霊、酒は過去の痕跡とも解釈可能
→ジャックの完全な妄想であり、おかしくなりきったシーン。
ジャックの第一声は「やあロイド、客が遅いな?」
平然と顔見知りかのように話し続けるロイド。
酒代を払おうとするがサイフに金が無く、ツケを頼むと了承される。
昔子供を怪我させたことや、そのことに対する妻への愚痴を強くこぼす。
ロイドは誰?
→妄想の産物。
→ホテルの悪霊。
昔から知っているかのような話しぶり
→妄想の産物。
→バーテンダーが過去の痕跡によるものだとしたら
過去知り合いだったと仮定されるが
そうなるとジャックは何者なのか
→過去のホテルの関係者の生まれ変わり
もしくは自分がそうだと思い込んでいる。
そこに走ってウェンディが酒場に駆け込み、ジャックに話しかける。
ダニーが「237号室の女に襲われた」と言ったらしい。
ちなみにウェンディが来た時点で、酒場とバーテンダーの姿は一切無い。
→ウェンディにはバーテンダーも酒も見えていない。
これにより「その人間にしか見えてない幻想も、映画では描写する」と明示され
ジャックやダニーが独りの時の描写が一気に怪しくなることになる。
また、鏡の前では悪霊もしくは幻想が実体化できる、
もしくは実体化してるように視聴者に演出する、という示唆かもしれない。
●237号室シーン
ハロランの部屋のシーンになり、ダニーの顔が映りテレパシーを受信してるような描写。
→首も怪我して危機感により助けを呼んでいるのだと思われる。
場面はまた変わり237号室にジャックが入り込む(キーは刺さったまま空いている)
風呂場に入ってる裸の女(美女?)を見つけ、驚くもニヤツキはじめ
洗面台の大きな鏡の前で抱き合う。
いきなり抱きつくの頭おかしくない?→もう狂ってるから問題ない。
ふとジャックが鏡を覗き込むと、鏡に映る美女の体は腐っている老婆のようだった!
その後抱いてる女も醜い腐った体になっており慌てて離れるジャック。
驚き後ずさり部屋を出て、鍵をかけて、刺しっぱなしで逃げ去った。
(映像を見る限りでは風呂場で死んだ死体が、
生前の状態で抱きつき、死体発見時の様子で鏡に映り実体化したようだ)
→ハロランさんからの前情報通り、237号室の自縛霊的な女性の話。
この場面を、ダニーが見た双子の娘&過去の死体現場のシーンと比較すると
ダニーが現実世界で見ていた双子の娘が、過去の痕跡の死体に変わらなかったのに対して
(変わる前に目を塞いだから進行しなかった?)
ジャックが見えていた美女が、過去の痕跡の腐乱死体に変わってしまったのは
ダニーよりも一歩先に進んでしまったという表現に見える。
ジャックはもう戻れない領域に居る、それが精神障害か、オカルトかは別として。
→そもそもこの全ての描写がジャックの妄想。
ウェンディから酒場でしっかり詳細を聞いているので妄想する材料は充分ある。
●夜宴会シーン
ちょこちょこ挟まれるハロランシーン。要約すると電話がつながらないことに気づき
無線の管理人に安否確認、後のシーンになるが最終的にホテルに単独向かうことに。
場面は変わりジャックが自室に戻り、ウェンディに237号室の結果報告。
報告内容は「何も無かった、首を絞めたのはたぶんダニーが自分でやったんだ」
何故何も無かったと嘘を付いたか?
→本当に覚えていない、精神が分裂している、頭がおかしくなっている。
→嘘を付いている、悪霊の手先になっている。
首を絞めたのは誰か?
→ダニーが自分でやった。ジャックは237号室で何も怪我をしていないし
奇妙な恐怖体験こそしたが実害が無い。
→悪霊がやった。
ダニーは別の部屋で寝ながら二人の会話を聞いているが、様子がおかしく
ちょこちょこ「ドアに書かれたREDRUMの文字」の画像が映し出される。
→今はトニーで未来予知。実際に後でそういうシーンがある。
ホテルを出て帰りたいというウェンディの申し出にジャックは激怒し部屋を飛び出る。
例の酒場に来ると、バーテンダーと酒だけではない、
大勢の客やバーテンダー、演奏者達が部屋一杯に、宴を催している。
→妄想が肥大化している。
→悪霊の力が強くなっている。
ロイドと話すジャック。今度は金を払おうとするがロイドは断る。
「あなたのお金は通用しない」「店主の命令」
→お金が通用する世界ではない、別世界。
妄想の世界、悪霊の世界、もしくは過去の世界で貨幣が違う。
→店主とは誰か。
妄想の産物(特に設定されて無い)、悪霊の親玉、
もしくはジャックの雇い主でもあるアルマンが黒幕?
さらにここで出会う新しい人物と、トイレの中の鏡の前で話し込む。
彼は「グレーディー」と名乗った。アルマンが言っていたものと同じ名前である。
ジャックはストレートに「妻と娘を惨殺し最後は猟銃で自殺したグレーディーでは?」
「顔も新聞で見たぞ」と尋ねるが、本人は否定する。
新聞で見たぞ→アルマンに話を聞くまでグレーディのことを知っていた様子は無い。
ホテルに行く日までの僅かな間に、調べ上げたとも考えにくい。
ホテルに該当の新聞を置いてるわけもないので妄想の可能性が高い。
(自分のホテルの殺人事件など見える場所に置かないだろう)
ジャックが「君はここの管理人だ」と言うと、グレーディーは言う。
「貴方こそここの管理人だ、ずっと昔から。私も昔からずっとここに居る」
昔から、とは?
→過去からずっとホテルに巣食う幽霊である。
ジャックは悪霊の生まれ変わり、もしくは悪霊が取り付いた状態である。
→ジャックは現実で実際に管理人であり、
『過去の痕跡』は時間軸を無視して今も存在する『今であり昔』なので
結果的にジャックは昔の管理人でもある、という解釈。
ここでグレーディーは話を変え
「息子さんは外部の者を私たちの世界へ連れ込もうとしている」と言う。
私たちの世界とは?
→ホテルのこと。
→要するにジャックの邪魔をしようとしているという意味。
外部のものだとダメなのか?内部のものだけを連れ込もうとしている?
→過去のグレーディーの事件では最後の自殺を含め一家全員死んでいる。
家族単位で死んでホテルの霊になることが目的である?
→深い意味はなく単に邪魔者がやってくるという意味。
グレーディーは続けて、ハロランを呼ぼうとしていることと、
ダニーが超能力者であり、それを使って邪魔をしてくるはずだという事を伝える。
ハロランを呼ぼうとしていることを知ってるのは悪霊の超常現象?
→かなり遠くの家までテレパシーが飛ばせるくらいの発信の強さなら
途中に感受性の高くなっているジャックが受信してもおかしくない?
ダニーが超能力者であることは親に秘密のはずだが、
これがジャックの妄想なら知りえないことではないからあり得ないのではないか?
→小さい子が一緒に過ごす家族に対して超能力を誤魔化し続けるのは無理がある。
薄々超能力を本当に持ってると感づいていたのではないか?
グレーディーは、昔自身が妻と二人の娘をしつけたように、
ジャックもウェンディとダニーをしつける必要がある、と促した。
→要するにジャックに対して殺人を促している。
悪霊の唆しか、本人の深層心理か、過去の痕跡の影響を受けて殺意が芽生えているのか。
このあとジャックは、無線機のパーツを抜き取り、ホテルの無線を使用不可能にした。
(後に分かることだが、全ての無線、雪上車を使用不可能にし、脱出できないようにした)
●タイプライターのシーン
バットを持ち怯えながらジャックを探すウェンディ。
広間のタイプライターのところまで来るがジャックはおらず、
ふとタイプライターで打ち出された文章をウェンディが見るシーン。
「ジャックはいまに気が狂う」と書かれており、今までの積み重なった原稿用紙をめくるが
全て「ジャックは今に気が狂う」という文章で埋め尽くされている。
背後からジャックがやってきて「傑作だろ?どうだ」と声をかけてくる。
→悪霊がウェンディに向けて書いた文章の可能性がある?
→序盤からこの文章で埋め尽くされていて、
やってきたジャックもこれを見てなんの反応も無い。
狂って認知の歪んだジャックにとっては本当に傑作が描かれており
自身が書いた文章で間違いないのだろう。
映画序盤で紙を破り捨てたときは見えないように隠していたが
そのころはまだ「文章がかけない事をいくらか自覚していた」事になる。
→ジャックがストレスのうえで2重人格になり、
主人格に対してのメッセージとも解釈できる。
後ずさりするウェンディに責めよるジャック。
「俺の責任を考えたことはあるか!?」
「俺は契約にサインしてホテルを管理しなきゃならないんだぞ!」
「オレの将来はどうなると思う!?」
→比較的まともな事を言っている。
執筆の不調に加え、これらがストレスになったのだろう。
「話は最後まで聞け、苦しめない、一気に殺してやる」
→和訳だが、話が飛び飛びで殺意と狂気に溢れた台詞になっていく。
恐怖のあまりウェンディはジャックをバットで殴り、ジャックは気絶する。
ウェンディは気絶したジャックを引きずり常温の食物庫に閉じ込める。
目を覚ましたジャックにウェンディは伝える。
「ダニーを連れて下の町に行く。そして医者を連れてくる(狂ったジャックのために)」
ジャックは「どこへも行けるもんか」と言い、
無線と雪上車を使用不可能にした事を告白する。
→ここに閉じ込めることを完全に決意していたようだ。
●食物庫にて
ノックの音がして、目が覚めるジャック。
するとグレーディーの声が響いてくる(姿は無い)。
『貴方に頼んだ例のビジネスは無理のようですな』
「そううるさくいうな、ココを出たらすぐに始末する」
『出来ますかな?乗り気でないようだし勇気も無い』
「もう一度チャンスをくれ」
『私は心配だ、もっと厳しい態度で臨まないと失敗しますぞ』
「分かった、喜んでやるとも」
『誓ってくださいますか』
「誓うとも」
この会話の後、鍵を開ける音が聞こえる(映らない)
例のビジネス→乗り気でない、勇気の居ること。
グレーディーに言われた「しつけをしなさい」から
話がつながってるなら、家族を殺すこと、だと思われる。
鍵を誰が開けたか?
→グレーディーだとすると、ホテルの悪霊は物理干渉が出来る事になる。
→鍵は空いていない。ドアの音もグレーディーも全て妄想。
秘密の隠し通路、もしくは排気口などから脱出した。
※ただし、少し後のシーンでこの部屋の扉が開いてるシーンが映る。
→ダニー。ダニーは首を怪我してからここまでまともに口を利いていないし
姿も現していない(自室で様子がおかしくなっているシーンがたまに映る)
次に出る場面では夢遊病のように歩いており、何をしていてもおかしくない。
首を怪我したときにホテルの邪悪な意思にあてられおかしくなっている。
●REDRUMのシーン
自室で寝るウェンディと、うわごとのように「REDRUM」と連呼し彷徨うダニー。
左手で包丁を取り、扉にREDRUMと書き出すダニー。
連呼するREDRUMの言葉は次第に大声になり、ウェンディは飛び起きる。
ダニーのおかしい様子に気づき抱きしめ落ち着かせようと死ながら鏡を見る。
そこにはREDRUMの字が反転していた。
”MURDER”(殺人)
→左手の包丁が殺意、右手で書いた殺人は警告をして止めようとしてる表現?
→元は鏡の中の右手人差し指の存在だったトニーが、
双子の娘の過去の痕跡を見たときから、現実のダニーの右手に移り
今回トニーの意思がある右手で警告メッセージを書いたが、
元は反転した世界の人物なので単語が反転している。
→本来のダニーの人格はホテルの悪霊の影響を受けて支配されかかっていて
ウェンディを殺そうとするために包丁を取ったが、
境界の強い二重人格であることが幸いして、完全に行動を支配されなかった。
→しばらく夢遊病のように意識を失い、漠然とジャックを助けに行った帰り。
→警告の意思ではなくジャックの「殺人」という強い意思を感じ取り、漠然と記した?
→未来予知で「REDRUM」を見たとしたら、自分で書くのは少し不自然。
自分の意思が無い状態で何者かの意思で書かされてしまうのを予知した?
そう仮定すると右手左手は関係なく、邪悪な意思のあまりの強さに影響され
おかしくなってしまっている状況の描写、ということになる。
直後ジャックが斧を持ってやってきて、ドアを叩き破ろうとする。
ダニーを抱え(正気に戻っている様子)トイレに逃げ込むウェンディ。
窓からダニーを逃し自分も逃げようとするが小さい窓のためウェンディは出れない。
ジャックはトイレの前までやってきて、トイレのドアをも破ろうとする。
その間の台詞や様子は殺人狂者そのものである。
そこにハロランが雪上車に乗ってホテルに到着。
車の音を聞いてジャックはホテルの入り口へと向かう。
→向かう途中の映像で、食物庫の扉が開いてることが確認できる。
ホテルの入り口で見つかったハロランは何の活躍も無く一瞬で殺される。
(その後のウェンディ視点でも、違わない状況で死亡が確認されているため
間違いなくハロランがやってきて、入り口付近で死亡している)
ハロランの死亡にあわせて、引き出しの中に隠れていたダニーが叫ぶ。
(ここでの叫びが、序盤の未来予知の一つである)
→ハロランの殺されたときの感情が発信され、それを受信して叫んだ。
●ウェンディの逃亡シーン
ここからのウェンディ描写では、本来居るべきでない人物が何人も見え
また血の洪水も見てしまう(序盤の未来予知の残り最後の一つ)
→ストレスが極限まで達することで幻想が見えてしまう?
ジャックに幻想が見えていたことを考えると、
一定以上のストレス下で幻想、もしくは悪霊が見えるようになる?
→もっとオカルティズムに考えるのであれば、ハロランの死によって
悪霊が活性化し力を持ち、より多くの人間の精神に干渉できるようになった。
(先のビジネスといい、ホテルで殺人を行われることで力を得るのかも)
●庭園迷路によるダニーの逃走シーン。
映画的には怖いおいかけっこだが、ここでは特別異常なことは起こらない。
→全てがホテルの悪霊の仕業だとしたら、ホテル外には力が及ばない?
最終的にはウェンディとダニーはハロランが乗ってきた雪上車に乗り逃亡成功。
ジャックは力尽きて庭園迷路内で凍死する。
→何故力尽きた?
→頭をバットで殴られた後遺症?
→寒さで力が出なくなった?しかしダニーとあまり外に居る時間は変わらないはず
→雪上車の音を聞き、その後倒れこんだため、諦めた。
または失敗が確定しビジネスを果たせなかったため、魂を奪われた。
●エンディング
ホテルに飾られる1921年の舞踏会の写真、そこに写るジャックの姿……
→ジャックは過去の痕跡=悪霊に囚われ、そのまま過去の住人になってしまった。
つまり「昔からずっと居る」は、過去の痕跡に入り込むことで昔から居ると同義になった
というタイムパラドクス的な面白い解釈演出での締めくくりである。
→ジャックは過去の管理人の生まれ変わりで、ホテルに来て前世を思い出し、囚われた。
時たま別人格のようになったり、昔の事を知ってるように語る状況に説明が付きやすい。
→似た顔の、似た波長の人間が過去に居て、精神がリンクしてしまった。
これも上記と同様に、別人格や昔の事を語ることに説明が付く。
→他人の空似。
●筆者が考えてる大筋の解釈まとめ
シャイニング(超能力)は実在し、ストレスが高いものほど感受性が強く発現しやすい。
ダニーは父から暴力を受け、その強いストレスからトニーが生まれ、
二重人格になると共に、シャイニングに目覚めた。
ダニーにはメッセージの発信、受信能力があり、トニーには未来予知能力がある。
過去の痕跡はさまざまな影響を及ぼすが、強い感受性を持った状態の人間ほど影響を受けやすい。
つまりシャイニングにおけるメッセージの受信能力が作用してしまうということ。
物理的な行動や実体、意思を持たないが、人の精神に大きく影響を与える。
ダニーはホテルに入る前から条件を満たしており、過去の痕跡を見ることが出来た(出来てしまった)
双子の娘にあてられてから次第に強く影響を受けることになる。
最終的にダニーが『殺人の強い意思』に支配されかけ母親を殺す寸前まで行くが、
トニーが無事であり、Murderの警告をかかげ目を覚まし、無事に復帰した。
ジャックはホテルに来てからストレスが最高潮に達し、別人格が生まれかかる。
シャイニングのようにメッセージの受信能力が発現するが
ダニートニーと違い境界がはっきりしていないため、精神は混在して狂っている。
悪夢を見た後にウェンディにダニーを傷つけたことを疑われ、ストレスは最高潮に。
過去の痕跡からの影響もモロに受けてしまい、過去の管理人の情報に侵食されていく。
ジャックの深層心理と過去の管理人の情報が入り乱れ、何者かも分からなくなり
狂気に落ちて、家族への不満から殺人を行うようになってしまう。
ウェンディはマトモな人間であったが、終盤ではジャックに襲われたり等
多大なストレスにより、過去の痕跡が見えるようになってしまった。
↑↑↑↑
以上、タイトルともなっているシャイニング(超能力)を全面的に肯定、理解した前提で考えると
あとは「過去の痕跡」を意思がある悪霊とみなすのか、
「過去の痕跡」に本来意思など無いが、狂った人間が感じることで妄想を膨らませ犯行に至るのか。
この2択の解釈となる。
不思議なもので、
全てを悪霊と解釈しようとしても不自然さが出るし
全てが妄想とするにも無理が出てくるが
超能力と過去の痕跡の概念を肯定すると、どちらでも解釈しやすくなる。
すなわち、オカルト寄りに解釈し「面白いオカルトホラーだった!」と解釈するも良いし
妄想寄りに解釈し「やっぱり怖いのは人間の狂気なんだな〜」と解釈するのも良い。
毎回違う解釈で眺めるのも面白い。
そういった楽しみ方を狙って作られた、映画版シャイニング、なんだろうと思う。